格差は拡大しているのか
格差拡大は雇用形態の中では、若年層を除けば格差が拡大しているわけではありません。
格差拡大の主な要因として年収500万円から600万円程度の正社員から年収200万円から300万円程度の非正規社員に雇用の重心が移っていることにあるのです。
企業が非正規社員を増やしている理由は、正社員を非正規社員に置き換えれば、人件費の節約になります。
企業側の立場に立つ人は、非正規社員増によるコスト削減効果を認めながらも、それはやむを得ない選択だったと主張しています。
グローバル競争が激しくなるなかで、人件費コストを削減して製品価格を引き下げないと、競争に勝ち残れないというのです。
もっともらしい理屈ですが、実際は多くの企業が競争力強化のためにやむを得ず非正規社員を増やしたのではなく、会社の利益を増やすために非正規社員を増やしたのです。
結局、政府が推進した構造改革で何が起こったのかといえば、大企業が従業員をどんどん非正規社員に置き換え、中小下請け企業への発注単価を引き下げ、利益を増やし、その利益を使って役員報酬や株主への配当金を増やしたということなのです。
その結果、中小企業は出口のない不況に追い込まれ、そして、すでに働く人の3分の1を超えた非正規社員は200万円から300万円程度の低所得を強いられているのです。
リストラされたり、会社が潰れたり、あるいは子育てのために一度正社員の職を失うと、なかなか正社員に復帰することができないのが現状です。
その結果、非正規社員の低所得層が増えていく。
それがここまで続いた格差拡大の正体です。
非正規社員の待遇を抜本的に改善しない限り、格差拡大は続くでしょう。
格差拡大をもたらす政策要因
格差拡大の背景には、もちろん構造改革政策があります。
構造改革によって、確かに大金持ちは増えましたが、そうした人の数はごくわずかで、逆に大きく所得を減らす人が続出したのです。
市場原理は、弱肉強食社会をもたらします。
たとえば、芸能人、プロ野球選手、漫画家など、完全な自由競争の下で報酬が決まる職業では、一流と二流の間に100倍の報酬格差が存在します。
二流タレントのテレビのギャラは3万円ですが、一流タレントのギャラは300万円といった具合です。
二流の人が努力をしていないとか、能力がないということは必ずしもありません。
ただ、運や能力や努力のほんの少し差が、とてつもない所得格差に結び付く、それが市場原理の持つ残酷な面なのです。
このまま、格差拡大が続くと、これまで存在しなかった低所得階層が日本にも確立するでしょう。
そして、その階層に生まれた子どもは、親が教育費を負担できないため、十分な教育を得られず、這い上がることがほとんど不可能になるのです。
そんな社会で本当によいのかどうか、考えさせられます。
起業するのはよいことなのか
景気が拡大すると大企業に勤めるサラリーマンは、ボーナスも増えて、生活がよくなりますが、中小企業の業績はなかなかよくならないので、そこで働く人の暮らしはよくなりません。
非正規社員として働く人の場合は、なおさら将来に明るい展望を持つこともできません。
そうしたとき、サラリーマン生活に見切りをつけて、起業するという選択をする人もいます。
によると開業時の平均年齢は43.7歳となっています。
2013年度以降、8年連続の上昇で開業年齢の高齢化が進んでいます。
ビジネスの高度化するのにしたがい、ある程度の仕事の経験と知識がないと開業が難しくなっているのです。
また、開業資金の問題があります。
新規開業で銀行はなかなか資金を貸してくれません。
つまり、どうしても自己資金に頼らないといけないのですが、年齢が若いと十分な資金を貯めることが難しいのです。
ただ、今の仕事をしても将来に展望が開けないので、みずからビジネスをしたいと思う人も多いでしょう。
特に男女平等とは言いながら女性に経営層への登用の道をあまり開いていない企業が実態としてはいまだに多いのですから、なおさらです。
しかし、起業は大きなリスクを伴います。
開業後10年経っても予定していたようなビジネスを実現できている企業は、それほど多くはないと思われます。
起業しても仕事が楽になることも、まずありません。
労働時間はサラリーマンのときよりも、ほぼ確実に長くなります。
小さい会社とはいえ、総責任者になるのですから、あらゆる雑用が自分自身に降りかかってくるからです。
ただ、国民金融公庫総合研究所の調査結果をみると、開業の総合的な満足度は、「かなり満足」が28.6%、「やや満足」が44.5%となっており、約7割が開業に満足しています。
正直な気持ちでいえば、もし事業に失敗したとしても、生活の面倒を見てくれる家族やパートナーがいるのであれば、思い切ってチャレンジしてみるのも悪くないと思います。
起業する場合でも、どうやって顧客を確保するのかだけは、しっかりと考えておく必要があります。
起業でいちばん苦労しているのは、その点だからです。
安易な転職はしてはいけない
「会社辞めたいな」と思ったことのないサラリーマンは、世の中にほとんどいないのではないでしょうか。
会社勤めをしていれば、いろいろと嫌なことや腹の立つことが起こります。
「なんでこんなにつらいことを続けなければならないのだろう」と思うのは当然です。
そんなとき、「今すぐ辞表をたたきつけてしまえ」という悪魔のささやきが聞こえることもあるでしょうが、安易に会社を辞めてはいけません。
それでは、転職で給料は上がるのでしょうか。
によると、前職の賃金に比べ「増加」した割合は34.9%、「減少」した割合は 35.9%、「変わらない」の割合は 28.4%となっています。
この結果を見ると「上がるか、下がるか、半々ではないか」と思われますが、もう少し詳しく見ると、厳しい現実が浮かび上がります。
転職で給料が「増加」した人のうち「1割以上の増加」は 24.7%、一方、給料が「減少」した人のうち「1割以上の減少」は 26.8%となっています。
転職で給料が大幅に下がるリスクは意外に大きいのです。
しかも、この調査はあくまでも転職して、常勤労働者として働いている人が対象です。
転職を目指して会社を辞めたものの、どこにも就職先がない人は含まれていないのです。
就職先がなければ、収入はゼロなので、もっと悲惨な結果が待ち構えています。
そもそも、大部分の人が給料アップをめざして転職活動をします。
にもかかわらず、転職した人の3割程度しか給料が上がらない事実を十分に認識しておくべきです。
さらに、転職にはさまざまなコストがかかります。
転職のためには何回も面接を受けなければならないので、その文、自分の時間を犠牲にしなければなりません。
転職に成功しても、煩雑な勤務先変更の手続きが必要になりますし、社宅を出なければならない人もいます。
勤務先を変えると勤続年数が短くなるので、クレジットカードが作れなくなったり、住宅ローンが組むのが難しくなったりします。
そして、いちばん大きなコストは、今までの会社での人間関係が失われてしまうことです。
それまで築いてきた社内の友人、同期、取引先との人間関係はすべて断ち切られます。
それらを新しい会社でもう一度築かなければなりません。
また、中途採用者が生え抜きと比べて、昇進面や配属先で冷遇される会社も、実際問題として、かなり残っています。
転職はそうしたリスクを踏まえても、なおメリットのほうが大きい場合に限るべきです。
このように転職による不利益を被る可能性が高い中、チャレンジしたい人も多くいるかと思います。
転職する場合の大原則は次の会社を決めるまでは、絶対に今の会社を辞めてはいけないということです。
サルの枝渡りのように次の枝をつかんでから、元の枝を手放すことです。
短気を起こして会社をやめてしまい、失業保険で食いつないでいても、すぐに保険は切れて、貯蓄も底をついてしまいます。
そうなると贅沢はいっていられませんから、どこでもよいので就職しようということになります。
そうして選んだ会社が、給料がよかったり、職場環境がよかったりするはずがありません。
よい職場選びは、自分に余裕があるときだけ可能なのです。
また、転職のときが、労働条件を優位に要求できる貴重な機会なので、このチャンスを生かしましょう。
会社から入社して欲しいといわれているのであれば、その欲しがる気持ちに乗じて、要求できるものはキッチリ要求しておくべきなのです。
「FIRE」という言葉を知っていますか?
最近はリモートワークの普及によって働く場所だけでなく、時短勤務や週3〜4日だけ正社員として働くなど勤務形態の多様化が進んでいます。
今までと違った働き方の選択肢が増えたことで、60歳の定年まで勤務するという常識についても、人生設計とともに改めて考えてみたい人も多いのではないでしょうか。
そこで働き方の一つのヒントになるのが、欧米で流行している「FIRE」です。
FIREとは「Financial Independence(経済的自立), Retire Early(早期退職)」の頭文字で、
Financial 「財政上の」「金融の」
Independence 「独立」「自立」
Retire 「退職する」「引退する」
Early 「早い」「早く」「初期の」「初期に」
つまり、「経済的な自立を実現させて、仕事を早期に退職する生活スタイル」のことです。
「お金の縛りがない=富裕層だけが実現できる悠々自適の生活」というイメージを抱く人も多いと思いますが、この早期リタイアにまつわるイメージの輪郭自体は、日本でもとくに目新しさはありません。
しかし、FIREが従来のそれと違うのは、ビジネスで成功したり遺産相続したりといった特定の人だけがなし得る生活ではないことです。
既にFIREを実践できている人は、毎年の生活費を賄えるような貯蓄と節約を意識しながら、リタイア後も身近に始められる投資の収益を得ることで、経済的自立をめざしています。
標準的な引退年齢より早くリタイア生活に入る夢は万国共通のようです。
FIREムーブメントでは40歳代あるいは50歳代前半での早期リタイアを目指すことが多いようです。
早期リタイアするためには、当然ながら経済的基盤が必要になります。例えば1億円があって年4%の収益(つまり年400万円)を毎年確保すれば、資金は減らさずに年収400万円の生活を送れることになります。
資産1億円を実現する、というのは大変ですが、仕事に追われる生活から脱出しよう、というのは夢がある話です。
大手企業のサラリーマンでなくても実現可能
これまでの早期リタイアは、大手企業の高収入のサラリーマンが会社のために寝る間も惜しんで働くことで、実現するイメージでした。
FIREは節約と貯蓄を続ければ実践できるものなので、一般的なサラリーマンでも実現可能です。
生活費をすべて資産運用による収入でまかなえなくても、「サイドFIRE」なら実現できるかもしれません。
「サイドFIRE」とは資産運用をメインにし、副業などの勤労収入と合わせて生活するスタイルです。
まずは、「サイドFIRE」を目標にしてみるのもよいでしょう。
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