崩壊してしまった日本人の年収がもたらす老後への不安

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格差社会の到来

世の中の変化のスピードはたいへん驚くべきスピードです。

特に格差の拡大においては顕著です。

正社員の中で年収の高い人と低い人に分かれるという形で生じたのではありません。

企業が正社員を絞り込み、非正規社員を増やすという人事戦略をとったため、高所得の正社員が減り、低所得の非正規社員が増えるという形で格差が拡大したのです。

企業は景気が悪くなって、経営が苦しいので正社員を減らしたのではないのです。

中流だった年収600万円の暮らしが半分の300万円に下がり、さらに年収が下がるという悪循環に陥っているのです。

自分の居場所がなくなるリスク

何歳まで生き残るかについては誰もわからないので、公的年金で死ぬまでの生活を保障してくれるのが一番よいのですが、残念ながら老後生活を守るためには2,000万円以上の貯蓄を持たなければならない時代となってしまったのです。

変化の激しい世の中なので、会社がいつなくなるのか分かりませんし、いつ会社からリストラされるとも限りません。

中高年になると、正社員の再就職はとても厳しいのが現状です。

正社員ではなく非正規社員で採用になると、年収は200万円にも届かない貧困水準に転落です。

運よく、リストラされることなく正社員のままで定年まで生き残れたとしても、年金生活の中で、再び貧困に陥る可能性が誰でも待ち受けています。

公的年金制度もアテにならない

政府はずっと「厚生年金のモデル年金は、現役世代の手取り収入の50%以上とするように設計している」といってきましたが、少子化の進展と年金制度の改正で、まじめに年金保険料を払っている人でも、貧困に陥らない保証はなくなってしまいました。

今の年公的年金は、自分が支払った保険料が積み立てられて、それが将来返ってくるしくみではありません。

払った保険料は、そのまま今の年金受給者に支払われているのです。

このため、子どもの数が減って年金の支え手が少なくなると、年金財政は厳しくなるのです。

厚生年金の名目額に注意

これから年金をもらう人の年金の給付水準は、毎年賃金上昇率に合わせて改善されることになっているのですが、その際、「マクロ経済スライド調整」によって、今後は賃金上昇率からおよそ0.9%を差し引いた率で年金を改善することになっています。

たとえば、ある年の賃金上昇率が3%となったとします。

「マクロ経済スライド調整」がなかったときは年金支給額も3%増やされていたのですが、この制度が適用された2004年度以降は賃金上昇率の3%から0.9%を差し引いた2.1%だけ年金額を増やすことになります。

つまり、年金給付の削減は、年金の名目額を減らすのではなく、年金の引き上げ幅を圧縮することで実現されるのです。

マクロ経済スライド調整の0.9%というのは、年金加入者の減少と平均寿命の延びから算出されたものです。

高齢化で年金が苦しくなる分の一部を、給付減で埋め合わせようということなのです。

しかも、この0.9%という調整率は暫定的なもので、想定以上に年金の支えてが減少したり、想定以上に平均寿命が延びたりすると、0.9%以上の給付減が行われることになるのです。

年金の引き上げ率は賃金の上昇率に追いついていかないので「現役世代の手取り収入の50%以上を確保する」という水準が守られるのは、年金をもらい始めたときだけに限られるのです。

また、国民全員が加入する国民年金も同様に負担増、給付減が行われています。

このような年金システムが続くようなことであれば、老後の選択肢は二つになります。

一つはこの金額でも暮らせる農村に移住することです。

もう一つは都会に暮らすために、年金では不足する分を貯蓄しておくことです。

それができなければ、老後も働くしかありません。

老後の生活コスト

高齢期には、新たな負担も生じます。

国の医療・介護制度はありますが、高齢者の増加により、負担増や給付やサービス減といった改悪が行われています。

高齢者の増加が続くような時代になってくると、老後の備えは、単に年金だけでは不足する生活費だけでは足らず、介護や長期入院をしたときのことも考えておくことが必要になります。

対応のしかたは二つあるでしょう。

一つは退職金の一部を自分で運用していく方法です。

そのとき、大きなリスクを避ける資産運用が必要になります。

いつ介護が必要になるか分からないのですから、大きな資金が必要になったときに、たまたま運用していた資産が値下がりして、売るに売れないという状況だけは避けなければならないからです。

もう一つは、民間の介護保険を利用する方法です。

終身介護保障保険という保険が販売されています。

たとえば、公的介護保険制度の要介護2級以上になったときに介護一時金と介護年金が生涯にわたって支払われるというものです。

本当は政府がしっかりと老後を守ってくれれば、このような商品は不要なのですが、残念ながらそうはならないのです。

生き残るリスクに立ち向かう生命保険

生命保険そのものは、高齢化に伴ってニーズが減少していきます。

一家の大黒柱に万が一のことがあったときに残された家族の生活を守るのが生命保険の本題の役割ですから、高齢化が進んで、定年までの平均年齢が短くなると、残された家族を守らなくてはいけない年数も短くなり、必要となる保障額が小さくなるからです。

生命保険が死亡のリスクに対応する商品だとしたら、生命保険会社にはもう一つのリスクに対応する機能があるからです。

それは、年金保険を通じた生き残るリスクへの対応です。

公的年金で十分生活ができるようであれば、生き残るリスクを真剣に考える必要はありません。

しかし、年金制度の相次ぐ改悪で、もはや公的年金だけでは生活できると考えている人はほとんどいません。

人生100年時代の世の中、定年後35年分の老後生活費を自力で貯蓄しておくことは不可能に近いくらいに難しいことです。

ですから、いつまで生き残っても大丈夫なように、終身給付の年金保険が必要なのです。

「自分はそんなに長生きしないから大丈夫」と考えている人に限って長生きしてしまうものなのです。

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